Real Time PCR法を用いた
GLM濃縮溶液の抗老化関連遺伝子発現に及ぼす影響
試験依頼社 株式会社APAコーポレーション
試験物質 GLM濃縮溶液
試験項目 抗老化関連遺伝子発現への影響解析
試験実施日 2019年8月20日
保存期間 試験終了後5年間
1 要約
GLM濃縮溶液をヒト真皮培養細胞液に添加すると、
・ヒアルロン酸産生酵素1遺伝子(HAS1)の遺伝子発現が有意に増加した。
・ヒアルロン酸合成酵素2遺伝子(HAS2)の遺伝子発現が有意に増加した。
・ヒアルロン酸分解酵素1遺伝子(HYAL1)の遺伝子発現が有意に減少した。
上記より、GLM濃縮溶液は真皮におけるヒアルロン酸合成を促進し、ヒアルロン酸分解を抑制し有効な抗老化能をもつ被験品であると考えられた。
2 試験目的
真皮線維芽細胞が産生するヒアルロン酸の機能が損なわれると、皮膚の瑞々しさやハリ・弾力が低下してしわやたるみを引き起こすと考えられている。1-3)そこで本試験では、真皮線維芽細胞によりヒアルロン酸の産生や分解など、抗老化に関わる遺伝子の発現に対する被験物質の効果を、リアルタイムPCR法により評価する。
3 試験概要
ハリや弾力があり、瑞々しく、シワができにくい肌状態を保つには、真皮線維芽細胞の産生するヒアルロン酸が不可欠であると考えられている。真皮線維芽細胞が産生するヒアルロン酸は皮膚の柔軟性や潤いに重要な役割を果たしていると考えられている4-6)。
一方、加齢した人の皮膚で観察されるシワ・たるみは、加齢に伴うヒアルロン酸の分解・変質の亢進、すなわち生理的老化が影響していると考えられている7-12)。そこで、本試験では、ヒアルロン酸の産生(HAS1、HAS2)および分解(HYAL1)に関わる遺伝子発現に与える被験物質の影響を、リアルタイムPCR法によって評価し、被験物質の抗老化に対する作用を検証した。
4 材料と試験方法
4-1 細胞
ヒト新生児由来の真皮線維芽細胞株NB1RGB細胞(RIKEN BRC,Japan)を、CO2インキュベーター(CO2濃度5%、37℃)を用いて培養し、本試験を実施した。
4-2 培地
10.0%(v/v)Fetal Bovine Serum(FBS,Cat No.SH30071.03,Hyclone,UK)および1.0%(v/v)抗真菌剤(Antibiotic-Antimycotic 100X, Cat No.15240-062,Invitrogen,USA)
を含むEagle`s Minimal Essential Medium(EMEM, Cat No.051-07615,Wako,Japan)を用いた。
4-3 被験物質
精製水により被験物質を、公比3で連続希釈して計3濃度(100%,30%,10%)を用時調整し、試験に用いた。
陰性対照には精製水を用いた。
4-4 遺伝子
TaqMan Assay(Applied Biosystems,USA)を用いて遺伝子発現解析を実施した。
4-4-1 抗老化関連遺伝子
1)Human Hyakuronan Synthase 1(HASI,Assay ID.Hs00758053_ml)
真皮線維芽細胞によって産生され、肌の水分保持に関与するヒアルロン酸合成酵素を
コードする遺伝子。
HAS1はHAS2より高分子のヒアルロン酸を合成する。
2)Human Hyakuronan Synthase 2(HASI,Assay ID.Hs00193435_ml)
真皮線維芽細胞によって産生され、肌の水分保持に関与するヒアルロン酸合成酵素を
コードする遺伝子。
3)Human Hyaluronidase 1 (HYALI,Assay ID.Hs00201046_ml)
4-4-2 内部標準遺伝子
1)Human Glyceraldehyde 3 Phosphate Dehydrogenase(GAPDH,Assay ID.Hs02786624_gl)
4-5 試験構成
遺伝子発現量の解析には1つの処理群につき3枚の35㎜ディッシュ(Cat No.150318.Thermo Scientific,USA)の平均値を用いた。試験物質調整を含め、試験に関わる操作は別途記載のないかぎり室温で実施した。
4-6 試験方法
4-6-1 細胞培養および被験物質添加
1)35㎜ディッシュに5.0×10³cells/2mLのNBIRGB細胞を播種し、CO2インキュベーター内で24時間培養した。
2)24時間後、35㎜ディッシュの培地を除去して被験物質および対象含有培地を加え、CO2インキュベーター内で24時間培養した。
4-6-2 RNA抽出・精製および定量
1)PureLink™RNA Mini Kit(Cat No.12183018A.Invitrogen,USA)を用いて以下のRNA抽出・精製を行った。
2)24時間培養後、培地を除去した35㎜ディッシュを37℃に加温したPBS(-)2mLで2回洗浄した。
3)600μLの2M Dithiothreitul(CAS No.27565-41-9.Invitrogen,USA)含有Lysis Buffer を加えて細胞を溶解し、ライセートを回収した。
4)Homogenizer(Cat No.12183-026.Invitrogen,USA)を用いて回収したライセ―ト中の細胞を破砕した。
5)細胞破砕液に600μLの70%エタノール(CAS No.64-17-5,Japan Alchol,Japan)溶液を加えた後、シリカメンブレン付きカラムに移す。12,000×g、室温15秒間延伸し、ろ液は廃棄した。
6)シリカメンブレンに700μLのグアニジンイソチオシアネート含有Wash Buffer Iおよび500μL含有Wash BufferⅡを加え、洗浄した。
7)シリカメンブレンをエタノール含有Wash BufferⅡで洗浄後、12,000×g、室温で15秒間遠心し、乾燥させた。
8)RNase-Free Water を30μL加え、室温で1分間静置した後、12,000×g、室温で15秒間遠心する、2回行いメンブレンからRNAを溶出させた。
9)溶出させたRNAの一部をUV透過性96ウェルブレート(Cat No.8404.Thermo Scientific,USA)に分取してTris-EDTA Buffer(TE(pH8.0),Cat No,310-90023,NIPPON GENE,Japan)により25倍希釈し、マイクロプレートリーダー(SPARK®10M TECAN,Switzerland)を用いて230nm、260nmおよび280nmの吸光度(OD230、OD260、およびOD280)を測定した。
10)OD260を用いて対照および被験物質のRNA濃度を次式により算出し、TE Bufferにより希釈してRNA濃度を10μg/mLに調整した。
RNA濃度(μg/mL)=A×K×0.3×10(希釈倍率)
A : 対照または被験物質のOD260
K : K=10、RNAの吸光係数
ℓ : ℓ=0.3、光路長(㎝)
4-6-3リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析
1)SuperScriptTM IV VILOTM Master Mix With ezDNase(Cat No,11766050
,Invitrogen,USA)を用いて、以下のRNAの逆転写を行った。
2)8連チューブ(AB1182,Thermo Scientific,USA)に1ウェルあたり1uLの10×ezDNasa Buffer,1μLのezDnase enzyme,6μLのNuclease-free Waterおよび2μLの10μg/mL RNAを加え、37℃で2分間インキュベートした。
3)2分後、8連チューブに1ウェルあたり4μLのSuperScriptTM IV VILOTM Master Mixおよび6μL Nuclease-free Water を添加し、リアルタイムPCR(QuantStudio®3,Applied Biosystems,USA)を用いて25℃で10分間、50℃で10分間、85℃で5分間加熱して、cDNAを合成した。
4)PCRプレート(Cat No,N8010560,Thermo Scientific,USA)に1ウェルあたり10μL TaqMan Gene Expressior,7μLの UltraPureTM Distilled Water(Invitrogen,Cat No.10997-015,USA)および2μLのcDNAを加え、プレートシール(Cat No.4360954,Thermo Scientific,USA)により密封した。
5)プレート遠心機を用いて溶液をスピンダウンし、気泡を除去した。
6)リアルタイムPRCシステムを用いてReal-Time qPCRを行い、対照および被験物質における各遺伝子の蛍光シグナルが任意の閾値に達する時のサイクル数であるThreshold Cycle(C1)値を算出した、内部標準遺伝子によりC1値を補正し、」C1値として、対照の◢C1値の平均により◢C1値を補正し、これを◢◢C1値とした。◢◢C1法によって1サイクルあたりの検出の差で2倍量の差となると仮定し、2⁻◢◢C1に代入して対照の遺伝子発現量を1とした場合の被験物質の遺伝子発現量を解析した。対照と被験物質添加の遺伝子発現量を対応のあるt検定で有意差検定を行った。検定はいずれも両側で有意水準を5%未満とした(P<0.05、P<0.01、P<0.001)。
5 検査結果
測定したC1値、測定結果の平均値、標準偏差および遺伝子発現の結果を棒グラフにした図を別紙に記載した。
5-1 ヒアルロン酸合成酵素1遺伝子(HAS1)発現に対する被験物質の影響
対照のHAS1発現量を1とした時の被験物質のHAS1発現量を、表1および図1に示した。
5-2 ヒアルロン酸合成酵素2遺伝子(HAS2)発現に対する被験物質の影響
対照のHAS2発現量を1とした時の被験物質のHAS2発現量を、表2および図2に示した。
5-3 ヒアルロン酸分解酵素1遺伝子(HYAL1)発現に対する被験物質の影響
対照のHYAL1発現量を1とした時の被験物質のHYAL1発現量を、表3および図3に示した。
6 参考文献
1)AK.Langton.,et al..Int.J.Cosmet.Sci.,32(5),330-339,2010
2) T.Quan.and GJ.Fisher.,Gerontology.,61(5),427-434-,2015.
3) MA.Cole.,et al.,J.Cell.Commum Signal.,12(1),35-43,2018.
4) Cll.Daly.,et al.,J.Invest.Dermatol.,73(1),84-87,1979.
5) Dll.Lee.,et al.,J.Dermatol.Sci.,83(3),174-181,2016.
6) KT.Dicker.,et al.,Acta,Biomater.,10(4).1588-1570,2014.
7) S.Shuster.,et al.,Br.J.Dermatol.,93(6).639-643,1975.
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10)J.Uitto.,J.Dermatol.Sci.,72(1),10-1,1979.
11)G.Jenkins.,Mech.Ageing.Dev.,123(7).801-810.2002
12)R.Sten and lll.Maibath.,Chin.Dermatol.,26(2).103-122,2008.